Date: Fri, 11 Oct 96 12:44:27 JST
From: UVSOR USERS NEWS 
Subject: [UUN:11] UUN 1(4) 1996.03.01 UVSOR将来計画資料   (3/3)
To: UUNML@wbase.fuee.fukui-u.ac.jp (UVSOR Users (News) ML)
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III. 第1回UVSOR将来構想委員会報告

    日時     平成7年7月14日 午後1時半〜4時半

    所外出席者  黒田晴雄(東理大・教授)、竹内伸(東大物性研・所長)
           木原元央(高エ研放射光・施設長)、原田義也(千葉大・
           教授)、佐藤繁(東北大・教授)

    分子研出席者 井口洋夫(研究顧問)、田中郁三(研究顧問、学位授与機
           構長)
           岩田、小杉、宇理須(オブザーバー)
           伊藤(所長)

1.以下の資料に基づいて背景を岩田、小杉が説明した。

        平成5年度、平成6年度 点検評価  報告
        将来計画委員会 UVSOR 検討小委員会 報告
        レーザー開発研究センター・物質開発研究センター 検討部会 報告
        平成7年度後期 UVSOR運営委員会 資料

2.学術審議会加速器科学部会の報告を黒田委員が行った。まとめると以下の
    とおり。

        (a) X線領域のニーズの拡大に対応
        (Photon Factoryの高輝度化, Accumulation Ringの放射光専用化) 
          SPring8に対し大学等の研究者にも円滑な利用を希望
        (b) 全国共同利用のVUV・軟X線第3世代高輝度光源の建設計画を
          早急に具体化すべき(最も緊急な課題)。現在は物性研が提案して
          いる
        (c) VUV・軟X線領域の一般的な利用拡大に対応するため、地域性を
          考慮しつつ適正規模の小型光源を大学・研究機関で整備
        (d) 人材養成が必要

3.東大物性研、東北大、高エ研放射光の計画についての説明が各委員から
    あった。
  特に、物性研の第3世代高輝度光源計画の進展状況が詳しく報告された。

4.フリーディスカッションの内容を以下にまとめる。

 UVSOR は、研究場所のごく近くで実験ができるという garden machine と呼べ
るような装置になるようキャンパス内に工夫して建設されたものであり、スペース
の拡張は考えていなかった。寿命としては20年程度を想定した。加速器は門外漢
でも運転できる方向で考え、当初、加速器の研究には力を入れないことにしていた。
chemical machine と位置付け、赤外領域の利用、VUV分光・光化学、有機固体の光
物性、固体表面での光化学反応を利用した物質開発など、化学に徹した研究を打ち
出すよう努力してきた。

 UVSORの点検評価ではUVSORの加速器の性能向上などのためには光源研究者の充実
が要望されており、当初の考え(門外漢でも運転できる加速器)とは違う指摘がな
されている。また、chemical machineとしての成果はかなり挙がっているが、共同
利用が始まって10年間強の実績として、ビームラインやビームタイムの半分以上
を分子科学分野以外の分野の研究に提供してきている。garden machineとしての特
徴は所内研究者のアクティビティを高める要因にはなっているが、一方、高分解能
な斜入射分光器の導入やレーザーを組み合わせた実験など新しい展開を図る場合に
はスペース的な制限が問題になってきている。

 学術審議会加速器科学部会の答申(上記(c))が実行に移されると、UVSORが
10年以上前に意図したことのかなりの部分は小型光源の整備で対応できることに
なる。つまり、小型光源は門外漢でも運転できる加速器に近いものであり、garden 
machineとして学内にとどめた利用が可能である。このような小型光源が、立命館大
学、広島大学に引き続いて他の大学等でも整備されだした場合には、UVSORの位置づ
けを変える必要が出てくる。これまでは、他に施設がないからUVSORを利用するとい
うようなユーザーにも対応する必要があったが、今後は考え直さねばならない。
UVSORは特徴を持った施設として他施設ではできないような実験ができるように整備
していかなくてはならない。 

 時代遅れの二流三流の加速器ではいつまで経っても一流の成果は挙げられないの
で、二流三流の加速器を運転していること自体が、放射光科学の進歩にとってはマ
イナスになるという見方がある。このように我々はどうしても加速器の格段の進歩
に目を奪われがちであり、加速器は年と共に急速に陳腐化するかのように錯覚しが
ちであるが、放射光の研究は加速器ばかりでなく測定装置にも大きく依存すること
を忘れてはならない。UVSORは当分は充分な成果の出せる加速器を有しており、整理
整頓をすればスペース的にも余裕を持って新しい測定装置が導入できるし、分光器
・測定装置のスクラップアンドビルドにより世界的な競争力は維持できると考えら
れる。ただし、今後、小型光源が大学等で整備されていく場合のことを考えると、
ビームラインのスクラップアンドビルドは、分子研UVSORの特徴を生かした研究に重
点を置く必要がある。従来のVUV分光・光化学、固体表面光化学、有機固体光物性等
の特徴ある研究に加え、レーザーを併用した高度な研究、短波長の自由電子レーザ
ーを利用した研究、レーザーでは励起できない内殻電子に注目した研究などが放射
光分子科学の新しい展開として期待される。なお、UVSORで成果の挙がっている赤外、
遠赤外領域での研究は今後は線形加速器を利用した自由電子レーザーを利用する方
が優位になっていく可能性があるので、赤外、遠赤外領域の利用をUVSOR(偏向部)
でどこまでやるのか見極めが必要である。

 UVSORはこれまで国際協力に大きく貢献してきた。アジア地区に関しては研究者
を受け入れたり、放射光施設の建設に協力したりしている。現在、韓国と台湾では
第3世代のVUV・軟X線高輝度光源が完成しており、日本からの利用が期待されてい
る。X線リングを所有していないこれらの国からの研究者を日本の硬X線施設に受け
入れ、逆にVUV・軟X線光源利用の方は日本人が韓国、台湾の方へ出かけていくのが
よいという考えもあるかも知れないが、国交や国際共同利用の経費の問題があり、
今はむずかしい。ただし、沖縄、九州地区の研究者は国内の施設よりも韓国、台湾
の方が近いので、今後、利用が活発化する可能性はあるだろう。東大物性研が計画
・推進しているVUV・軟X線高輝度光源で成果を挙げうる分野として分子科学は非常
に重要な分野であるので、その建設に対する分子研の協力が期待されている。 

 分子研が5〜10年先をめざして、80m x 100m 程度の敷地で第3世代の次に来る
ような放射光光源の検討を始めるのなら、所外の光源研究者の支援も得られるもの
と考えられる。UVSORでの自由電子レーザーやコヒーレント放射光に向けての基礎研
究は第4世代とも言える次世代の光源につながるものである。学術審議会加速器科
学部会の答申に従って大学等で整備されていくであろう小型光源は学内利用が主目
的であり、分子研のような大学共同利用機関とは明らかに目的が異なる。UVSORの新
光源計画では、現存しないような新しいものをめざすべきであり、他施設ではでき
ないような放射光利用研究を可能にするようなものにしなければならない。

IV. 第1回UVSOR II 検討会報告 
 
日時     平成7年12月7日 午後1時半〜4時50分

所外出席者  山崎鉄夫(電総研・部長)、安東愛之輔(姫工大高度産業研・
       教授)春日俊夫(高エ研・教授)、加藤政博(高エ研・助手)
       田中均(理研大型放射光・先任研究員)、
       高木宏之(東大物性研・助手)

分子研出席者 小杉、濱、鎌田、木下、木村(以上、UVSOR施設)
       宇理須、伊吹、田原、見附、間瀬(以上、極端紫外光科学研
       究系)
       酒井、山崎(以上、技術課)、伊藤(所長)

1.所長が IIIの中間報告で示されているUVSOR 将来計画(4)について概要を述
べ、さらに施設長が将来計画(1)〜(4)に関する全般的な説明を行った。

2.濱助教授を中心として練られたUVSOR II 計画の中核になる中規模(周長にし
て現在のUVSORの約2倍程度)の光源加速器に関する第ゼロ次案の説明があった。
そのデザインの図とパラメータを示す。

     リングの図、パラメータ表[文末付録参照]

 放射光の輝度を向上させる方法にはいくつかアプローチがあるが、これは電子の
バンチ長を極端に短くする方向で設計されたリングである。一方、現在、主流にな
っている第3世代高輝度光源リングは電子ビーム自身のエミッタンス(位相空間の
広がり)を小さくする方向で設計されたもので、そのようなデザインコンセプトを
踏襲する限りリングは必然的に極めて大きくなり、規模の点でUVSOR II 計画にそ
ぐわないものとなる。ここで提案されたリングは、UVSOR II 計画として適正規模の
範囲で、ある程度の低エミッタンスを実現し(現在のUVSORの約 1/10 )、次世代光
源のひとつと目されている極短バンチ電子ビームの生成が可能なリングになってい
る。電子ビームのエネルギーは 1 GeV を基本として(現在のUVSORは 0.75 GeV )、
放射光の波長領域を真空紫外から軟X線までに絞った。これは国内で進行中の高輝度
光源計画と競合しない領域であり、また現在のUVSORで行われている研究の連続性を
考慮したものになっている。

 このリングには約 10 m に達する直線部を2ヵ所、3.6 m の直線部を4ヵ所設け
てあり、紫外域〜真空紫外域のFEL及び長尺アンジュレータの導入が可能になって
いる。バンチ長は理論的に約  4 mm から100μm 以下まで可変であり(現在のUVSOR
では約 15 cm)、ピコ秒以下の時間分解の実験や数十μm 以上の遠赤外領域で高輝
度のコヒーレント放射光を発生させることができる。また、バンチ長が最近のレー
ザーのパルス幅と遜色ないほど短いことから、レーザーを併用した二重共鳴などの
実験でも高効率な測定が可能となる。このような特性は第3世代リングからは得ら
れないものである。

 極短バンチ電子ビームの生成は加速器物理学において現在も重要なテーマとして
研究途上にあり、このリングのデザインには細かい部分で検討するところが残され
ているが、光源加速器としては特徴のあるものになっているとの指摘が所外出席者
の多くからあった。今後、UVSOR II 計画に向けてのFELや極短バンチ長の基礎研究
を現存のUVSORで積み重ね、より確実性の高い計画になるよう練っていく方針が示さ
れた。また、理論的なビーム制御の検討についてなど所外研究者の積極的な協力が
得られる見込みが立った。

3.電総研から短バンチ生成が可能でFELに主眼をおいた中規模光源計画の紹介が
あり、また、姫工大から汎用性があり非常に長尺のアンジュレータを導入可能な
中規模光源計画の紹介があった。膨大な予算や敷地面積を必要とする第3世代リン
グと一線を画すために、それぞれ苦労しながらデザインをしている状況の説明があ
った。姫工大光源計画は来年度より具体的に始まることになっており、現在予算関
係を詰めているとの報告があった。東大物性研の第3世代高輝度計画については面
積的に高エ研 Photon Factoryの4倍にもなっている現状が示された。しかし、土
地問題もほぼ解決の目途が立ち、かなり実現性が高くなっているようである。一方
、
東北大の計画は必然的に東大の計画を意識せざるを得ず、これまで光源加速器のデ
ザインの方針がなかなか固めにくかった事情の説明があった。

4.加速器建設を実現するには充分な時間と人を長期に亘って投入することが必須
であり、また、国内・国外情勢を見て計画を増強していく必要もある。これまで光
源開発の点で孤立感の強かったUVSOR施設としては、UVSOR II 計画の実現に向けて
他研究所・大学との密接な協力関係を築くことが最優先課題である。今回の検討会
では多くの加速器研究者の意見を求めながら将来計画を煮つめて行く方向性が示さ
れた。

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